藤姫:遥かなる時の中で、四神に守られし霊地、平安なる京がございました。
東の青龍、南の朱雀、西の白虎、北の玄武。
これら四神が奪われた時、京の危機を救うべく、龍神の巫女が現れました。
龍の玉を見い受け、巫女を守る八葉と共に。
アクラム:今宵を待ち侘びていたぞ。
京に呪詛を。
四神を、我が手に。
京を守る結界はもう破った。
後は龍神の巫女を召喚すれば。
元宮茜:おはよう。
森村天真:お、茜。
茜:天真君、宿題やってきた?
天真:いや、当てられてからやればいいだろう?
茜:そんなの無理だよ。
流山詩紋:茜ちゃん、天真先輩!
茜:詩紋君、おはよう。
天真:またこっちから来たのか?中学校には遠回りだろう?
詩紋:うん、でも桜がきれいだし。
茜:うん、どうしたの?
詩紋:僕も早く高校に行きたいな。
茜:詩紋君。
詩紋:あ、あっちこっちの中学校からいろんな人が来るんでしょう?新しい友達、作りたいんだ。
天真:だから、気が早いっての。
詩紋:そうだね。
茜:きっと来年の桜は新しい友達と見られるよ。
アクラム:龍の玉を。
は。
アクラム:龍神の巫女、私の声を答えよ。
茜:誰?
天真:おい、茜。
茜。
詩紋:茜ちゃん、どうしたの?
茜:呼んでる。
アクラム:見付けたぞ。
天真:茜!
アクラム:ようやく来たな、我が元へ。
天真:茜!
アクラム:邪魔をするな。
天真:詩紋!
詩紋:天真先輩!
天真:詩紋!茜を連れて早く逃げろ!
詩紋:でも。
天真:早く行け!
詩紋:茜ちゃん。
茜ちゃん、しっかりして!茜ちゃん!!
茜:誰?私を呼んだのは、貴方?
時空:我は時空の声。
汝を継ぐ未来の可能性を見た。
茜:未来?
時空:龍の玉を託そう。
藤姫:四神が鬼の一族の手に落ち、京を守る結界が解かれました。
京の人々と鬼は長きに渡った争ってきました。
恨みは消えることなく、積もり積もっています。
茜:ここは?
藤姫:一体、だれに癒すことが出来るのでしょか。
このままでは、京に災いが。
茜:す、すみません。
突然ですが、ここはどこなんでしょう。
びっくりした?ごめんね。
ああ、その着物姿かわいいね。
ねえ、お父さんかお母さんいるかな?藤姫:父上と母上ですか?
橘友雅:聞いてどうしようというのだ?
茜:誰か大人の人を呼んでもらおうかと。
友雅:呼ばなくてもここにいる。
何者だ、娘。
茜:え?失礼しました。
藤姫:お待ちください。
茜:あの。
女房:誰か?藤姫さまのお部屋に。
茜:あの、私。
嘘。
いや、助けて!
源頼久:消えた。
友雅:ご覧になりましたか、藤姫。
藤姫:ええ。
目に見えぬほどの神気が、体から滲み出ていました。
友雅:一体、何者なのでしょうね。
藤姫:友雅殿、お願いします。
今の方を探してください。
頼久も、お手伝いを。
頼久:承知いたしたしました。
友雅:よほど大切な方と見える。
藤姫:京を救うことが出来るのは、あの方しかいません。
茜:天真君、詩紋君。
誰か、いないの?
アクラム:泣いているのか?心細いのか?辛い目にでもあったか?私の呼びかけによく応じてくれた、龍神の巫女。
茜:ええ?
アクラム:怖いか?龍神の巫女よ、いざ我が元へ。
茜:龍神の巫女?
アクラム:龍の玉を得たであろう。
茜:龍の玉、あれが。
アクラム:そなた神の力をその身に宿すことが出来る、ただ一人の龍神の巫女なのだ。
茜:何?どういうこと?
アクラム:すべては私に譲ればいい。
落ち着いたか?
茜:ありがとうございました。
あの、貴方は?
アクラム:私は鬼だ。
茜:鬼?
アクラム:そう、古くに海を渡り、この地に住み付いた一族。
京の人間とは姿や風習が異なるため、鬼と呼ばれている。
茜:姿が。
アクラム:そなたも見たであろう。
見慣れぬものを恐れ、刃を向ける人間ども
を。
茜:私、友達を探しに行かなきゃ。
ここは京?
詩紋:ここは?あの、もう一人女の子がいませんでしたか?
男:もう一人だと?
女:仲間を連れてきてんのかい。
詩紋:え?何のことですか?
子供:鬼!
詩紋:鬼って?
子供:黙れ!お前の髪と目の色が鬼の証拠だ!
男:ガキだからって、容赦しねえぞ。
頼久:止せ。
男:でもこいつは。
女:分かったろう。
あいつは鬼なんだよ。
な、何すんのぞ。
詩紋:あの、ありがとうございました。
ただの人違いだ。
頼久:人だかりはあの娘とは関係ありませんでした。
確かに珍しい格好をしておりますが。
友雅:そうか。
一体どこまで飛んでいったのやら。
詩紋:娘、珍しい格好ってまさか。
あの。
その女のこのことを詳しく教えてもらえませんか?僕の友達かもしれないんです。
茜:天真君、詩紋君、このどこかにいるの。
誰か、何でもいいから、力を貸して、お願い。
友雅:静か過ぎる。
男:この辺りは結構騒がしいですよ。
友雅:人の声がするが、鳥の声が聞こえなくなった。
おや、あれは。
男:友雅様。
そんな娘にちょっかい出すより、早く巫女を見つけないと。
友雅:しい。
茜:早く見つけなきゃ。
なに?
友雅:娘、さっきから何を探しているのだね。
君を待っている人がいるのだ。
茜:え?天真君と詩紋君を知っているんですか?
友雅:私だよ。
茜:あ、どこかでお会いしました?
友雅:おや、釣れないね。
簾をもち話を交わしたことじゃないか?逃しはしないよ。
茜:ああ!放して!
友雅:悪ふざけが過ぎてしまった。
落ち着きなさい。
君の中の龍神をそれ以上目覚めさせるじゃないよ。
茜:そんなこと、私。
これ、私のせいで。
詩紋:茜ちゃん、どこ?
イノリ:危ねえ。
男:こ、これは一体何事だ。
藤原鷹通:皆さん、落ち着いてください。
治まるまで待ちましょう。
永泉:まさか。
お上、これ。
安倍泰明:龍神の気が龍脈を通して広まっている。
友雅:このままでは、龍神の巫女まで、己の力に飲み込まれてしまう。
頼久:あの力を断てばよろしいですよね。
茜:いや!どうしてこんな。
お願い、止まって!私の中、何かがいるの?誰か助けて!天真君!詩紋君!
詩紋:茜ちゃん!
茜:詩紋君、無事だったんだね。
詩紋:茜ちゃん、じっとしてて。
茜:ダメ!!!詩紋君、来ないで!
詩紋:茜ちゃん。
茜:危ないから、離れて!
詩紋:離れないよ。
何があっても、もう手を放ったりしないから。
茜:詩紋君。
詩紋:独りぼっちにして、ごめんね。
これは?
頼久:そこか?
茜:巻き込んじゃってごめんね。
私が近付くと、みんな壊しちゃ。
お願い、止まって。
止まった。
よかった。
鷹通:さあ、片付けて、仕事に戻りましょう。
男:お上、ご無事ですか?お上、お上。
泰明:龍脈は断ち切られた、問題ない。
詩紋:茜ちゃん、大丈夫?茜ちゃん、茜ちゃん。
友雅:龍脈を力ずくで断ち切るんだと、無茶をするね、頼久。
さて、藤姫の元へお連れしようか?
茜:あれが龍神の力なの?私の中にあるものが近付くものを壊してしまう。
みんなを傷つけてしまう。
天真君、どこにいるの?無事だよね。
春の野に
若菜つまむと
こしものを
散りかふ花に道は惑ひぬ
頼久:雷と雨が引き裂く、神が二つ。
濡れた瞳は何を見つめる。
第二話鬼に魅入られし者
いつも貴方のお側に。