古典文法の基礎入門―、動詞の活用1.四段未然a 連用i 終止u 連体u 已然e 命令e(書く)(五段)2.上一、i i iるiるiれiよ(見る)3.上ニ、i i u uるuれiよ(起く)4.下一、 e e eるeるeれeよ(蹴る)5.下二、 e e u uるuれeよ(得)6.カ変、こきくくるくれこ/こよ7.サ変、せしすするすれせよ8.ナ変、なにぬぬるぬれね(死ぬ)9.ラ変、らりりるれれ(あり)二、助動詞の接続1.未然形につくもの:す、さす、しむ、る、らる、ず、じ、む、まし、まほし2.連用形につくもの:つ、ぬ、たり、けむ、き、けり、たし3.終止形につくもの:べし、めり、まじ、らむ、らし三、助動詞活用1.四段:む、けむ、らむ2.下二:る、らる、す、さす、しむ、つ3.ナ変:ぬ4.ラ変:たり、り、けり、めり、なり5.形客詞型:まほし、たし、べし、まじ、ごとし6.特別型:(1)ず:○、ず、ず、ぬ、ね、○(2)き:せ、○、き、し、しか、○(3)まし:ませ、○、まし、まし、ましか、○(4)じ:○、○、じ、じ、じ、○(5)らし:○、○、らし、らしき、らし、○四、主な助動詞1.希望:まほし、たし、ばや、なむおのが行かまほしき所へいぬ。
訳:自分が行きたい所へ行く。
常に聞きたきは、琵琶・和琴。
訳:常に聞きたいのは、琵琶と和琴である。
ほととぎすの声、たづねに行かばや。
訳:ほととぎすの声を、尋ねに行きたい。
いつしか梅咲かなむ。
訳:早く梅が咲いてくれたらいいなあ。
2.禁止助動詞:な・な-そゆめ寝ぬな。
訳:けっして寝るな。
波、な立ちそ。
訳:波よ、どうか立たないでくれ。
この珠を取りたまひそ。
訳:この珠をお取りにならないで下さい。
3.詠嘆:な、よいみじうかなしな。
訳:たいそう悲しいことですよ。
こひしとよ。
訳:恋しいと思うことですよ。
4.打消:ず、ざり、えもの知らぬことのたまひそ。
訳:わけのわからないことをおっしゃらないで下さい。
習はざらなむ。
訳:習わないでいてもらいたい。
いはまほしきこともえいはず、訳:言いたいことも言うことができず、せまほしきこともえせず。
したいこともすることができない。
5.断定:なり、たりこの西なる家は何人の住むぞ。
訳:この西にある家はだれが住む家か家なる妹訳:家にいる妻そこを相津といふなり。
訳:そこを相津というのである。
久しく秋津の習俗たり。
訳:長い間日本の国のならわしとなっている。
6.る、らる(れる、られる)うちそむかれて、人知れぬ訳:自然にうしろむきになって、思ひいで笑ひもせられ。
人知れぬ思い出し笑いもされ(自発)、いもねられず。
訳:寝ることもできない(可能)。
7.使役、尊敬:す、さす、しむ、たまふ(四段尊敬)あなかま、人に聞かすな。
訳:ああうるさい。
人に聞かせるな。
まづ垣間見せさせよ。
訳:まずのぞき見をさせよ(使役)。
つかひをつかわして召しまう訳:使いを遣わしてお召しになって来しむ。
参らせる(使役)。
帝大いにおどろかせたまひて、感ぜ訳:帝は大いにおどろきあそばして、しめきこしめすことかぎりなし。
感動なさってお間きにになることこの上もない。
「せ」は「す」の連用形、尊敬の意。
「たまひ」も尊敬の意。
いざたまへ。
訳:さあいっしょにいらっしゃい(さあどうそ)8.ば(未然形につく場合:ならば。
已然形につく場合:から、ので、のに、と)心あらば。
訳:もし思いやりのある心があるならば。
風波やまねば、なほおなじ訳:風波がやまないので、やはりおなじ所にいところにあり。
る。
秋立ちて幾日もあらねばこの訳:秋になって幾日も立たないのに、たもと寝ぬる朝の風は手本寒しも。
に寒く感じられるなあ。
空を見れば、月はいと細くて、訳:空を見ると、月はたいそう細く、姿は湖影は湖のおもてにうつりてあり。
の表面に映っている。
9.とも(動詞終止形)、ど、ども(已然形)心の師とはなるとも心を師とせざれ。
訳:心の師とはなっても、心を師としてはいけない。
まねべども、えまねばず。
訳:まねをするけれども、まねをすることができない。
わすれがたく、くちをしきこと訳:忘れがたく、残念なことが多いけれど、多かれど、えつくさず。
述べつくすことができない。
10..過去:き(体験と未経験「た」)、けり(詠嘆「たなあ、たことだ」、伝聞「たそうだ」)昔もひとたびふたたび通ひし道なり。
訳:昔も一度二度通った道である。
山里の嵐の声は木の葉なりけり。
訳:山里の嵐の音は木の葉散る音であったのだ。
いみじうかなしきものは世なりけり。
訳:たいそう悲しいものはこの世の中であったことだ。
昔、男ありけり。
訳:昔、男がいた(そうだ)。
11.過去、完了(た)、継続、結果(ている):り(四段已然、サ変未然)、たり白き水、はやく流れたり。
訳:白い水がはやく流れている。
なんとも思へらず。
訳:なんとも思っていない。
几帳のうしろに立てたる火の訳:几帳のうしろに立ててある灯台の光は光はあらはなり。
あかあかとしている。
橋を八つわたせるによりてなむ訳:橋を八つ渡してあることによって八橋といひける。
八橋といったのだ。
めのわらはなむこの歌をよめる。
訳:女の子がこの歌を詠んだ(係り結び)。
おもしろく咲きたる桜を、長く訳:心もはればれするように咲いている桜折りて、大きなる瓶にさしたるを、長く折って、大きな瓶にさしてある様こそをかしけれ。
子こそすばらしい。
高山の尾の上に伏せれ。
訳:高い山の峰の上に横になっていろ(命令形)。
大路に人ありきければ、訳:大路に人が歩いていたので、立っているえ立てらで出ていにけり。
ことができないで出ていった。
12.意志、勧誘、推量、婉曲:む(ん)、むとす、むず来とあらば行かむ。
訳:来いというならば行こう。
いかでその宮の琴聞かむ。
訳:どうかしてその宮の琴を聞きたい。
心あてに折らばや折らむ。
訳:当て推量で、もし折るならば、折ることができるだろうか。
ほととぎす今こそ鳴かめ。
訳:ほととぎす今こそ鳴くのがよい(勧誘)。
きこえまほしくおぼすことも訳:申しあげたいとお思いになることもあるだろう。
あらむ。
知りたらむ人もがな。
訳:知っているような人がいればいいなあ。
そのことさせむとす。
訳:そのことは、そのようにしようとする。
里へ出でむずる。
訳:里へ出ようとする。
13.「む」の否定:じけふは立たじ。
訳:今日は立たないようにしよう。
一生の恥、これに過ぐるは訳:一生の恥で、これ以上のものはないだろう。
あらじ。
14.完了:つ、ぬ秋冬もすごしつ。
訳:秋冬も過ごしてしまった。
烏のねにおどろかされて、訳:鳥の声に目を覚まさせられて、にくかったので、にくかりつれば、殺しつ。
殺してしまった。
はかなくさつきも過ぎぬ。
訳:とりたてて言うほどのこともなく五月も過ぎてしまった。
わが身を失ひてばや。
訳:わが身を亡いものにしてしまいたい。
はや舟に乗れ。
日も暮れぬ。
訳:はやく舟に乗れ。
日も暮れてしまう。
この僧の顔に似てん。
訳:この僧の顔にきっと似ているだろう。
これいつまでありなむ。
訳:これはまさにいつまであるだろう。
夜ふけぬ。
かへりたまひね。
訳:夜が更けてしまった。
お帰りになってしまいなさい。
15.めり(しているようだ、ようだ)ほたるはおどろくまで照ら訳:蛍はおどろくまで照らしているように見える。
すめり。
宝と思ひためりき。
訳:宝物と思っているように思われた(完了たる+めり→ためり)。
16.現在推量:らむ、過去推量:けむ子泣くらむ。
訳:子どもが泣いているだろう。
花の散るらむ。
訳:花が散るのだろう。
かかるめし、世にありけむや。
訳:このような例が世間にあっただろうか。
顎州にありけむ昔の人もかく訳:顎州にいたという昔の人もこのようにすやをかしかりけむと、耳とばらしかったのだろうと耳をとめてまりて聞きたまふ。
お聞きになる。
生けらむ世。
訳:生きているような世の中。
(「生け」は四段已然形、「ら」は完了「り」未然、「む」は連体、婉曲の意)17.べし、まじ(「べし」の否定)いかが問答すべき。
訳:どのように問答したらよいだろうか。
人のうらみもあるまじ。
訳:人のうらみもないだろう。
18.伝聞推定:なり男もすなる日記といふものを、訳:男も書くという日記というものを、女もしてみむとてするなり。
女も書いてみようと思って書くのである。
五、「なむ」の判別1.花咲かなむ。
訳:花が咲いてくれればいいなあ(願望終助詞、未然形につく)。
2.花咲きなむ。
訳:花がきっと咲くだろう。
(「ぬ」未然形「な」<連用形につく>+「む」)3.花なむ咲く。
訳:花が咲く。
(係助詞)六、係り結びの法則:1、連体形結び:ぞ、なむ、や、か月は海にぞ入る。
訳:月は海に入る。
「ぞ」は上の「海に」を指示強調する。
あまた夜そ寝る。
訳:幾晩も寝る。
胸なむいたき。
訳:胸が痛い。
羽根といふ所は、烏の羽のやう訳:羽根という所は、烏の羽のようであるのにやある。
か。
「や」は疑問、「に」は断定の助動詞「なり」の連用形、「ある」は「あり」の連体形。
山の名は何とか申す。
訳:山の名は何と申すのか。
「か」は疑問。
2、已然形結び:こそかかることこそまだ知らね。
訳:このようなことはまだ知らない。
「こそ」は強意、「かかること」を強調する。
「ね」は打消の助動詞「ず」の已然形。
助動詞活用表。