「こと」「の」
「の」「こと」にはそれ自体、意味はなく、「音楽を聴く」を名詞化するという機能があるだけです。
「の」「こと」は、多くの場合、どちらでも使えます。
ただ、語感としては、「こと」の方がやや硬く、「の」はやや柔らかい感じです。
学術論文などを別にすると、一般に「の」が使われる例が多いようです。
いくつか例文を挙げておきます。
明日の試合で我々が勝つこと/のは確実です。
友だちが大勢、応援に来てくれたこと/のが嬉しいです。
テレビで北京に大雪が降ったこと/のを知りました。
「の」「こと」を使う文型には次のようなものがあります。
1.真偽、可能性を表わす述語の主語として
・・こと/のは、当然だ、確実だ、無理だ、本当だ、正しい、うそだ、など。
2.感情、評価を表わす述語の主語として
・・好きだ、きらいだ、悲しい、嬉しい、心配だ、必要だ、など。
3.思考、感情の対象(目的語)として
・・知る、疑う、悲しむ、喜ぶ、忘れる、恐れる、驚く、など。
二.「の」「こと」はどちらでも良い場合が多いと言いましたが、片方しか使えない場合もあるので、要注意です。
1.「こと」しか使えない場合
「私の趣味は、音楽を聴くことです」のように、「XはYです/だ/である」の文型でYの部分に「こと」を使った名詞節を使う場合です。
この場合、「こと」の代わりに「の」を使うことはできません。
次の例文を見ましょう。
今日の仕事は、部屋の大掃除をすることだ。
旅行が成功した主因は、好天に恵まれたことです。
私の夢は将来、医者になることである。
「・・・ことがある、・・・ことができる、・・・ことにする、・・・ことになる、ことはない」
のような文型でも、「の」は使えません。
学生時代にこの本を読んだことがあります。
来週、行くことにしましょう。
これで10回も話したことになります。
これ以上、話すことはありません。
後ろに来る動詞が「話す、伝える、約束する、命じる、祈る、希望する・・・」など発話に関する動詞の場合には、「こと」を使います。
明日、欠席することを伝えてください。
今後は遅刻しないことを約束します。
試験に合格されることを祈っています。
2.「の」しか使えない場合
「・・・のはXです」という文型があります。
強調したい(焦点を集めたい)部分をXのところに入れるのですが、この文型では「・・・のは」のところを「・・・ことは」にすることはできません。
勝ったのは山田さんです。
(山田さんが勝ちました)
北京へ行くのは来春です。
(来春、北京へ行きます)
遅刻したのはバスが来なかったためです。
(バスが来なかったので遅刻しました)
彼女と初めて出合ったのはここです。
(ここで彼女と初めて出合いました)
「何故、どうして、どこ、いつ、だれ、なに」などの疑問詞を使って、理由、場所、時間、人、物などを尋ねるときもこの文型です。
勝ったのはだれですか。
北京へ行くのはいつですか。
遅刻したのは何故ですか。
彼女と初めて出合ったのはどこですか。
述語が「見る、見える、聞く、聞こえる」などの知覚動詞の場合。
私は王さんが急いで走ってくるのを見ました。
部屋の窓から公園で子どもたちの遊んでいるのがよく見える。
朝、庭におりて、鳥がないているのを聞いた。
遠くで犬が吠えているのが聞こえる。
「感じる、感じられる」もこのグループに入ります。
後ろに来る動詞が「待つ、手伝う、じゃまする、やめる、止める」など。
子どもが寝るのを待って、テレビを見た。
家具を運ぶのを手伝ってください。
雨なので花見にゆくのをやめました。
「こと」「の」を用いた名詞修飾節は使用頻度の高い文型です。